大石直紀
夢幻漂流 (小学館文庫)
静岡県の山中から白骨死体が発見された。遺留品から約二十年前に残留孤児の家族として移住してきた中国人女性「玲子」である可能性が高いと判断されたが、疑念を抱く静岡県警の中年刑事・沼田康一郎は彼女の足跡を追いかける。その一ヵ月後、大阪で起こった幼児誘拐事件。なんの脈絡もないとみられた二つの事件が、「玲子」の存在をきっかけに、交錯する。果たして「玲子」は生きているのか、白骨死体は誰なのか、誘拐事件の背景には何があるのか―。希望を胸に日本にやってきて、儚く漂う女たち。その切ない人生に、盛りを過ぎた中年刑事の想いが絡み合う。