近藤史恵
ねむりねずみ (創元推理文庫)
ことばが、頭から消えていくんだ――役者生命を奪いかねない症状を訴える若手歌舞伎役者中村銀弥。後ろめたさを忍びながら夫を気遣う若妻。第一幕に描出される危うい夫婦像から一転、第二幕では上演中の劇場内で起こった怪死事件にスポットが当てられる。二か月前、銀弥の亭主役を務める小川半四郎と婚約中の河島栄が、不可解な最期を遂げた。大部屋役者瀬川小菊とその友人今泉文吾は、衆人環視下の謎めいた事件を手繰り始める。梨園という特有の世界を巻き込んだ三幕の悲劇に際会した名探偵は、白昼の怪事件と銀弥/優の昏冥を如何に解くのか?