谷沢永一
歴史通 (ワックBUNKO)
著者の考えの基本と枠組みは、すべてこの1冊に集約されている―世間のくまぐまを味わいわけるのは、すなわちわれわれの舌頭である。人の世のくさぐさを受けとる味感が鋭敏であればあるほど、室町時代の町衆のように、あら面白の人の世や、と手拍子を打つ心躍りにも至る。誰もが食を味わうように、人を味わい世を味わうのが人生の行程であるだろう。されば万事につけて味覚が鋭く広やかであるにこしたことはあるまい。本書は、皆さま方にそっと差しだす、味見のためのささやかな試食の膳である。