八島雅彦
トルストイ (Century Books―人と思想)
世界文学の中に屹立する二大傑作『戦争と平和』および『アンナ・カレーニナ』を生み出したロシアの文豪トルストイ。彼にはたぐいまれな広い視野と目に映る広大な生活のすみずみまでを識別する豊かな感受性とがあった。彼はロシアの生活を愛し、ロシアの人々、とりわけ農民たちと子どもたちを愛した。しかし、この豊かな精神は、一方で真理を探求してやまない精神でもあった。彼は時代の風潮に反発し、あらゆる権威・権力に反発して、絶対的な自由を、真の創造性を、そして人生の本当の意味を執拗に求めつづけた。その彼がついに見つけだした人間にとっての自由と創造性、生きることの意味とはいかなるものだったのか。人生の教師トルストイの投げかける問いかけは、現代においてどんな意味をもちうるのだろうか。