小路幸也
スローバラード Slow ballad (実業之日本社文庫)
2014年4月。東京・北千住で喫茶店〈弓島珈琲〉を営むダイは53歳になっていた。学生時代、バンド仲間の淳平、ヒトシ、ワリョウ、真吾と暮らした自宅を改装した店舗だったが、ダイにも、常連客のゲームクリエイター・純也や三栖刑事にも家族ができ、少しずつ生活も変化している。かつて三栖が下宿していた純和風の家には、学生時代の友人ワリョウの息子・明とその友人たちが下宿していた。ある日、水戸に住むヒトシの息子の智一が「東京に行ってきます」というメモを残して家出したと連絡が入った。ダイは三栖や明、純也らと智一の行方を捜し始めると、智一と同じ高校に通う村藤瑠璃がケガを負った家族を残し、行方不明になっていることがわかる。時を同じくして、人気俳優となった淳平の妻・花凜にストーカー騒ぎが起こった。ダイたちは、智一の高校の先輩にあたる仁科と、新宿二丁目でゲイバーを営むディビアンがそれらの事件に関わることを突き止める。学生時代をともにした仲間たちが〈弓島珈琲〉に再び集結し、「あの頃」に封印した事件と対面する――。青春時代のほろ苦さが沁みる珈琲店ミステリー。