朝倉かすみ

地図とスイッチ

昭和47年9月8日。同じ日、札幌の同じ病院で生まれたふたりの赤ちゃん――「ぼく」蒲生栄人と「おれ」仁村拓郎。進学、就職、結婚、離婚etc.……毎日毎日、無数にあるスイッチの中からひとつを選んで押して、選択を繰り返したふたりの男は、どんな道筋でそれぞれの人生の「地図」を描いてきたのか――。感動作『田村はまだか』の名手・朝倉かすみが紡ぐ、40歳の「ぼく」と「おれ」の物語。 <ぼくが考えるスイッチとは、つまり道筋だ。そしてスイッチを押すとは、どの道筋を選ぶか決めること。それを繰り返して、自分だけの地図ができる。経路と言ったほうがいいかもしれない。最終地点までの道順だ。だが、そのとき選択しなかった道筋――それぞれ枝分かれしている――も、ぼくの地図には載っているような気がする。恐ろしいほど細かく、複雑な地図だ。そのなかで、ぼくの選んだ道筋には矢印が書き込まれていて、現在地が赤くマーキングされている、そんなイメージ。 「人生のスイッチ」と言うと少々大げさだが、生きていくということは、毎日のとても小さな選択の積み重ねだとは思っている。> (本文より)

昭和47年9月8日。同じ日、札幌の同じ病院で生まれたふたりの赤ちゃん――「ぼく」蒲生栄人と「おれ」仁村拓郎。進学、就職、結婚、離婚etc.……毎日毎日、無数にあるスイッチの中からひとつを選んで押して、選択を繰り返したふたりの男は、どんな道筋でそれぞれの人生の「地図」を描いてきたのか――。感動作『田村はまだか』の名手・朝倉かすみが紡ぐ、40歳の「ぼく」と「おれ」の物語。 <ぼくが考えるスイッチとは、つまり道筋だ。そしてスイッチを押すとは、どの道筋を選ぶか決めること。それを繰り返して、自分だけの地図ができる。経路と言ったほうがいいかもしれない。最終地点までの道順だ。だが、そのとき選択しなかった道筋――それぞれ枝分かれしている――も、ぼくの地図には載っているような気がする。恐ろしいほど細かく、複雑な地図だ。そのなかで、ぼくの選んだ道筋には矢印が書き込まれていて、現在地が赤くマーキングされている、そんなイメージ。 「人生のスイッチ」と言うと少々大げさだが、生きていくということは、毎日のとても小さな選択の積み重ねだとは思っている。> (本文より)

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