福永武彦
夜の三部作 (P+D BOOKS)
“暗黒意識”を主題にした『夜の三部作』、愛と孤独の様相を正面から描いたエッセイ『愛の試み』。福永文学の精髄に迫る。 人間の奥深い内部で不気味に蠢き、内側からその人を突き動かそうとする“暗黒意識”を主題に書かれた「冥府」、「深淵」、「夜の時間」からなる『夜の三部作』。死後の世界を舞台にした「冥府」、敬虔なクリスチャンの女性教師と野獣のような男との奇妙な愛を描いた「深淵」、 男女の三角関係を過去と現在の二重時間軸構造で描く「夜の時間」は、それぞれに福永の死生観が滲み出た先鋭的かつモダニズムに満ちた中篇作品である。 福永が長期療養生活から復帰して間もない時期に続けざまに発表された作品群ではあるが、それぞれのストーリーに繋がりはない。 また、ほぼ同時期に発表された短篇「水中花」、「時計」、「遠方のパトス」、「河」も併録。 一方『愛の試み』は、愛と孤独についての一切の妥協を排して思索した足跡を綴ったエッセイ集で、愛と孤独の様相を正面から論じると同時に、自作小説の自解の側面も持つ重要な作品である。エッセイのほかに9篇の挿話(掌小説ともいえる)から成る。そのうち「愛の終り」と「見知らぬ町」の2篇は新潮版の文庫版や全集に未収録の作品。 附録として、「冥府」、「深淵」、「夜の時間」、「遠方のパトス」の主要異動表のほか、「冥府」初刊本扉に記された未発表の自筆俳句、東京療養所入所時の自筆メモ等の貴重な資料も収録している。 この作品の容量は、35.2MB(校正データ時の数値)です。 ※この作品はカラー写真が含まれます。