宮沢賢治
黄いろのトマト
「にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね。」「黄金だよ。黄金だからあんなに光るんだ。」―ふたりだけで、まるでおとぎ話のように愉快に暮らす、幼い兄と妹。ところがある日、彼らの無垢な心は、思いもかけないかたちで傷つけられた...。「かあいそうだよ。ほんとうにかあいそうだ...。」蜂雀の声が波のように聞こえてくる。いつまでも、いつまでも...。
「にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね。」「黄金だよ。黄金だからあんなに光るんだ。」―ふたりだけで、まるでおとぎ話のように愉快に暮らす、幼い兄と妹。ところがある日、彼らの無垢な心は、思いもかけないかたちで傷つけられた...。「かあいそうだよ。ほんとうにかあいそうだ...。」蜂雀の声が波のように聞こえてくる。いつまでも、いつまでも...。