娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが―。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。

動物は今しか考えない。

その言葉が本当ならば、現代の人類は、動物に先祖返りしているのか。伊坂幸太郎は予言をしていたのかもしれない。愚かな議論を行い、当事者以外の者まで巻き込み、炎上を促すこの風潮も、人の心にズケズケと踏み込み、嘆き悲しみをセンセーショナルな原稿にして、正義面をしているどこぞのマスコミ報道も。

ヒトがヒトである所以。
ヒトをゴミ同様に扱う人間は、
最早人間とは言えない。
アニメなどで誇張されたキャラではなく、本来の意味でのサイコパスと言えるだろう。

ただの計算高く、腹黒い人間とは違う。彼らは金に目が眩んだ凡人だ。自分の利益のことしか考えない卑しい小物に過ぎない。

法の編目をかいくぐった悪人たちを裁きたかった。物語としてならば、いかなる犯罪も、制裁も許される。

千葉の能力をもってすれば、犯人を懲らしめることなど容易かっただろう。そうはいかなかったのがこの物語の醍醐味であり、読者への問いかけとなっている。

さて、選曲に戻ろう。
今回はジャズミュージシャン、B.J.トーマスの名曲『雨にぬれても』を選ばせてもらった。映画『明日に向かって撃て』の主題歌でもある。

姿を見せる時には、いつも雨が降り出す千葉の姿と、心に傷を負いながらも、前に踏み出そうとする山野辺夫婦をイメージしてみた。
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脚注として。
ひとつが入間人間氏が世に出た最初の作品。
ひとつがボカロPトーマ氏がリリースした最初のメジャーアルバムに収録されているいちばんはじめの曲。

歌詞がどうとか内容がどうとか正直今回はどうでもよくて、ただ単純に僕が昔生きていた時に聴きながら読んでいただけです。感傷の墓標。
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