うぐはら 中村理聖 砂漠の青がとける夜 あらすじを読む 溝端さんと会わなくなってから、人肌の温度を深く味わう機会はほとんどなかった。準君の気配を感じようとすると、高校生の頃初めてできた彼氏の穏やかな声を思い出した。痣があるはずの腕の温もりを思うと、大学時代に随分長いこと付き合った、一つ年上の先輩の部屋の匂いを思い出した。付き合いそうで付き合わず、何となく疎遠になった男の人たちの肌の記憶が、私の中で蘇る。けれどこの部屋には誰もいない。卓上ライトの光が青白さを孕んでゆくように思い、私は無性に寂しくなった―。第27回小説すばる新人賞受賞作。 サカナクション シーラカンスと僕 暗い夜の海の中を、一匹の青い魚が泳ぐ。 カラフルな魚たちと共に入れられた一匹。 月が輝き、夜空が海の底となって溶ける時、彼は若さを丸め込んで捨てて、 息が詰まりそうな街を抜けて、青い尾鰭を動かし泳ぎだす。 1 0 0件のコメント 送信 シェア