佐藤健一
和算を教え歩いた男 (日本人と数)
地方でも名主クラスの人たちは、一般の農民から尊敬されることが必要であった。人の上に立つリーダーならば当然で、彼らの中に数学を学ぶ人は多かった。このような地方の村へ、数学を教える人が自分からやって来て教えてくれる。こんなありがたいことはなかった。江戸から来ている数学者はほとんどの村で歓迎された。数学を教えて旅をする人を「遊歴算家」と現在では呼んでいる。有名な人としては山口和、佐久間纉、法道寺善などである。彼らは広範囲に遊歴して歩いたから、各地にその足跡を残している。山口や佐久間は日記を書いた。これは現在でも残っている。本書では、これらの記録に加え、各地で催されている行事や現在に残る算法書などを総合して、日本全国の数学の活用状況を再現しようと試みた。