佐藤正午

きみは誤解している (小学館文庫)

「ねえ聞いてるの?自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって、あたしは言ったのよ」婚約者がたしなめる青年の、唯一の趣味は競輪。死期が近い父親の当たり車券を元手に、彼が大口勝負に挑もうとする表題作。競輪で儲けた金で十三年間暮らす独りぼっちの男が告白する「この退屈な人生」、八年前のある出来事をきっかけに車券を買わなくなった男が会社の金を持ち出したという兄を追って競輪場へと向かう「人間の屑」など六篇収録。出会いと別れ、切ない人生に輝く一瞬と普遍的な人間心理を、競輪場を舞台に透明感あふれる文章で綴った作品集。

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