福田和也
日本の家郷
著者は、彷徨の果てに幻影としての日本を見た倭建命、出発も到着も奪われた「くらい」小説を書き続けた徳田秋声、覗き穴の向こうに彼方を見出した永井荷風らの彷徨に家郷を見る。「みやび」を「離宮」に囲った後水尾院と、その美意識を受け継いだ荻生徂徠、本居宣長に対し、連鎖、生成、流離としての「日本」を再興し、過程としての古典を認識するための新しい国学を求める。西欧と対峙して文明開化に絶望した横光利一、「何処でもない場所」への情熱につかれたモダニストとしての保田與重郎、そしてモダニズムの帰結としての日本を追求した萩原朔太郎らの凝視した、「虚妄としての日本」を見据える。三つの小説論、古典論、批評論から、「日本」が顕れる。三島由紀夫賞受賞作品。