さだまさし
かすてぃら (小学館文庫)
年末の全国コンサートツアーの間隙を縫って病床の父を見舞う日々。その脳裏に甦る、昭和三十年代、復興から笑顔が戻った長崎、十二歳でひとり上京した下町の人間模様―。カステラの香りとバイオリンの調べに包まれた記憶の中心には、報われず、辛酸を舐め続けても底抜けの明るさで乗り切っていく、身勝手で傍迷惑で、それでも皆から愛された破天荒な父と、振り回され続けた家族の姿があった。シンガーソングライターとして作家として、家族の風景、時間と季節の移ろい、いのちの煌めきをテーマに珠玉の名作を紡ぎ続けるさだまさしが父に捧ぐ、初の自伝的実名小説。