池澤夏樹

骨は珊瑚、眼は真珠 (文春文庫)

死んだわたしは何も思わない。何も考えない。わたしはもういないのだ。 わたしはただおまえを見ている。 ここでいいんだ、とおまえは考える。ここが一番いい。苔のむした墓石などに封じ込めるよりは、この光の中へ放ってしまう方がずっといい―― 亡くなった夫の骨を砕き海に撒く妻に、遠くからそっと見守る夫がやさしく語りかける。空と海の透明な光に包まれた短編。

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