小林泰三
奇憶 (祥伝社文庫)
現実生活はみじめなものだった。恋人も去り、大学も行かず、金はない。だが〔夢〕だけはよく見た。そこでは鬼の顔をした老婆「よもつしこめ」が囁くのだ。「物心がつくと世界は一つしか見えなくなる」と。そうだ、子供の時、僕は確かに二つの月を見た。あれははたして現実だったのか?現代人が忘れてしまった、無垢な子供が感じる〔もう一つの世界〕を描く、奇想ホラー。
現実生活はみじめなものだった。恋人も去り、大学も行かず、金はない。だが〔夢〕だけはよく見た。そこでは鬼の顔をした老婆「よもつしこめ」が囁くのだ。「物心がつくと世界は一つしか見えなくなる」と。そうだ、子供の時、僕は確かに二つの月を見た。あれははたして現実だったのか?現代人が忘れてしまった、無垢な子供が感じる〔もう一つの世界〕を描く、奇想ホラー。