筒井ともみ

舌の記憶 (新潮文庫)

夏の陽ざしが退き始めた夕暮れに食べる白玉の、懐かしいような喉ごしの感触がいとしかった―。昭和三十年代、世田谷。俳優の伯母と伯父、儚げな母。風変わりな家庭で育った私は、病弱でも不思議に大人びた少女だった。あの頃の胸疼かせる思い出のよすがは、口にした食べものの味と香り。春の雛膳、秋のお稲荷さん、冬のおでん。季節の匂いが連れてくる追憶に満ちた自伝的エッセイ。

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