石牟礼道子

石牟礼道子全集・不知火 (第8巻)

土の上に生き、海を抱いて眠り、何気ないことに笑い、遠くからやって来て、どこかへ吹いていく時の流れに身をあずけ、ひたすら自然の波間を漕ぎ渡り、祈り深く生きた私たちの祖先。それをこの数十年という歳月の狂気ともいうべき無責任さがあっという間にくびりさいたのだ。何という罪の深さ。それは、チッソ水俣工場の罪であるにとどまらない。企業の中にいてその罪を犯し、ひき受けたものたちとは別に、何も知らず、いっさいかかわりに気づかず無恥の上に立ち、毒を胎んだ生活の利便をむさぼった私たちにも問われるべき罪の重さでもある。

最初の感想を投稿しよう。