谷村志穂

千年鈴虫 (祥伝社文庫)

母と通うカルチャーセンターに、『源氏物語』を教える大橋征一がいた。王朝の愛憎劇を読み解く老講師は、教室の外でも、光源氏のごとく女たちの求めに応えているらしい―母もその一人だった。私は大橋と二人きりで会った。半ば、興味本位に。どんな風に誘うのか、偽源氏が織りなす倒錯の世界を、垣間見たい思いもあった。

母と通うカルチャーセンターに、『源氏物語』を教える大橋征一がいた。王朝の愛憎劇を読み解く老講師は、教室の外でも、光源氏のごとく女たちの求めに応えているらしい―母もその一人だった。私は大橋と二人きりで会った。半ば、興味本位に。どんな風に誘うのか、偽源氏が織りなす倒錯の世界を、垣間見たい思いもあった。

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