上野修
スピノザ『神学政治論』を読む (ちくま学芸文庫)
聖書の信仰と理性の自由は果たして両立しうるのだろうか―。17世紀、「自由と寛容」を掲げた共和国オランダで、スピノザはこの難問を考察し、『神学政治論』を出版する。だがこの著作は、キリスト教会から「前代未聞の悪質かつ冒涜的な書物」と罵られ禁書とされたばかりか、当時最もリベラルであったデカルト主義者たちからも危険視された。人びとはこの書物の何を恐れたのか。その大いなる逆説をもってスピノザが説いたことは、本当は何だったのか。スピノザ研究の第一人者が、『神学政治論』の謎を、平明な語り口であざやかに読み解く。