花房観音

情人 (幻冬舎文庫)

愛でもなく、性欲でもなく。ただどうしても手に入れたい。 こんな家出たい、自分を変えたい、人生を変えたい、思い通りにいかない仕事なんて辞めたい、誰かと比べられたくない、私らしく生きたい、でもあの女みたいに生きたくない、どうしたらいいかわからない、どうしようもない―その時男は、ただの女の逃げ場になる。 「揺れたのは、地震なのか眩暈なのか」 一九九五年・神戸、二〇一一年・東京、そして現在。いつか来る未曾有の地震に怯え地震の狭間に生きる、何者でもない私たち“女”の物語。 激震のなか我を忘れて繋がる男女。ふたりは誰か―。 著者最高傑作! 高校生の笑子が神戸の実家で被災した日、母親は別の男とセックスしていた。 その男は親戚の若い男、兵吾。笑子は母親を軽蔑しながらも、性の匂いしか出さない男、兵吾に惹かれる。 高校生、大学生と、自分の体を通り過ぎる男たち。でも―誰とどんなセックスをしようが、それは母親が兵吾としていただろうセックスとは根底から違うように感じる。 軽蔑していた家族から逃げるように神戸を離れ、そして、結婚を機に東京へ。そこで兵吾に再会した笑子だったが、そんな中、東日本大震災が起こり―。 女を抱くことしかできないあの男は、 友人も家族も夫も知らない私を、知っている。

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