香納諒一
あの夏、風の街に消えた (角川文庫)
あの夏、僕はまだ子供で、どこにむかってどんな一歩を踏み出せばいいのかさえわからずにいた。挫折を恐れ、傷つくのを恐れ、ぬるま湯の中に自分の居場所を探すような愚か者だった。人の愛し方を知らず、自分が大事に思うものを大事にしつづけて生きていくにはどうしたらいいのかもわからなかった。世界というものが、それまで自分が思っていたよりもずっと大きくて面白いことを教えてくれたのは、あの夏のあの街だった。
あの夏、僕はまだ子供で、どこにむかってどんな一歩を踏み出せばいいのかさえわからずにいた。挫折を恐れ、傷つくのを恐れ、ぬるま湯の中に自分の居場所を探すような愚か者だった。人の愛し方を知らず、自分が大事に思うものを大事にしつづけて生きていくにはどうしたらいいのかもわからなかった。世界というものが、それまで自分が思っていたよりもずっと大きくて面白いことを教えてくれたのは、あの夏のあの街だった。