藤沢周平

春秋山伏記 (新潮文庫)

崖の下に伸ばした母親の腕に女の子がぶら下がっている。辺りには人影もなく、かよわい女の力では引っ張り上げることができない。母親の腕の力が尽きかけたその時、山伏が現れて、子供を救い上げた。大鷲坊と名のるこの山伏は、白装束に高下駄、髭面の大男。羽黒山からこの村の薬師神社の別当に任ぜられてきたのだが、神社には長年住み着いている偽山伏がいて、村人たちの信望を集めていた...。山伏と村人たちとの交流を通して、著者が愛してやまない郷里山形県荘内の人々の往時の暮らしを、郷愁をこめて書き綴った時代長編。

最初の感想を投稿しよう。