渡辺一民

中島敦論

谷崎潤一郎に現代小説の展望を見いだし、「本格的な構想的ロマン」にこだわりつづけた中島敦が、1930年初秋の北京を舞台にした長篇「北方行」の完成を断念したのはなぜか?この問いに始まる本書は、同時代と真摯に向き合い、“歴史”をかいくぐりながら“他者”への問いを深化させていった日本最初の植民地出身作家の全軌跡を明らかにしてゆく。「巡査の居る風景」ほか初期短篇群から、掉尾を飾る「李陵」まで―「作品すべてを網羅する中島敦の全体像」を、まっこうから提示した待望の書。

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